法人から個人に生命保険を名義変更する行為について税務署は否認するのか?

保険の名義変更

法人→個人への生命保険の名義変更

オーナー経営者が生命保険を法人から個人に名義変更をするケースがあります。

その場合の多くある目的は下記のようなケースです。

① 会社の保険契約を個人に契約を移して、個人の保障を準備していくため
② 退職金支払いの一部を生命保険の現物支給で行うため

特に最近では、「逓増定期保険」の名義変更を行うケースが増えています。
会社が契約している逓増定期保険を社長個人に名義変更して個人契約にします。

逓増定期保険を会社から社長個人に名義変更する

逓増定期保険を法人から個人に名義変更した場合、保険契約の権利が移動することになります。

その時の逓増定期保険の値段は、名義変更時の解約返戻金(時価)となります。

法人から個人に逓増定期保険の名義変更をした後に、保険が何らかの理由で不要となって保険解約をした場合、個人に大きな解約返戻金が戻ってきて、タイミングによっては法人からの保険買取価格よりも増えて儲かることがあります。

保険の解約により個人が利益が出るケース

生命保険(特に逓増定期保険)を法人から個人に名義変更して保険契約を継続した後、その保険が不要となって解約をして大きな解約返戻金を手にした場合、

その「保険の名義変更」の行為自体が道義上で問題ないのかどうか、税理士によっては疑問をもつケースが時々あります。

「法人から個人に保険の名義変更して渡す」
⇩ ⇩
「個人で保険を継続する」
⇩ ⇩
「保険を解約する」
⇩ ⇩
「個人に利益が出る」

このような一連の動きが、道義上でどうなのかと考えるようです。

この生命保険(逓増定期保険)の名義変更については、約20年前くらいから、税制上は問題ないものの、道義上どうなのかという話が何度も何度も税理士から問われてきました。

しかし、2021年の今まで、保険の名義変更の経済行為について、一度も税務署に否認されたケースはありません

なぜなら、「名義変更」という行為は、法人の経済行為であって、税務署は法人が行う経済行為にとやかく口を出す機関ではないからです。

税務署というのは、法人が行った経済行為に対して、税務上で正しい税務処理をしているかどうかをチェックする機関であるからです。

たとえば、オーナー企業がオーナー社長と「ゴルフ会員権」や「自動車」や「不動産」を売買する行為自体に、税務署がとやかく言うことはありません。税務署は法人が行ったその経済行為が、税務上で正しい計算や処理がされているかどうかをチェックするのです

しかし税理士の中には、もしかすると、「同族会社の行為否認」(法人税法132条1項)※1
によって、税務上は正しくても、保険の名義変更の行為そのものを否認してくるのでは…
と危惧しがちです(過去20年で法人税法132条1項で否認されたケースは一度も無いですが)。

税務署が「同族会社の行為否認」を使えば、日本の99.4%を占めている同族会社の行う、どのような経済行為でも否認できてしまうことになり、もしこれを税務署が乱用すれば、日本国は法治国家としての信頼を失うことになります

そのため、この「同族会社の行為否認」は、現在において、ほぼ使われることがありません。

「生命保険の名義変更」とはまったく関係の無い事案ですが紹介すると、平成27年3月25日に「同族会社の行為否認」で国と納税者(企業)が東京高裁で争った結果、納税者側が勝訴しています(過去に事例が無かった新しいことについて争われました)。それくらい、「同族会社の行為否認」の運用は税務署側において自由に使えるものではありません。

そして、この生命保険(逓増定期保険)の名義変更については、約20年間で、すでに数えきれない事例が発生しており、それらが1つも否認されていないことから、今後、急に「名義変更の経済行為」が否認されることは、現行の税制上では、ほぼ100%考えられそうにはありません

実は、このような生命保険の名義変更について、国は全国の税務署に対して「通達」(法人税基本通達36-37 ※2)というものを新しく作り、「保険の名義変更」についての対処方法を指示しており(2012年)、それによれば「保険の名義変更」の経済行為については否認しないが、名義変更をする保険の価格は、名義変更時の解約返戻金とすることを明確化して、その後に個人が保険の解約によって利益が出た場合には、その増えた部分については一時所得として確定申告して納税をしているかどうかをチェックするように、と指導しています。

そして税務署が、個人が保険の利益を、一時所得として正しく納税しているかどうかをチェックしやすいようにするため、全ての生命保険会社から税務署に提出される「支払調書」の形式を変更して、法人で負担した保険料がいくらか、個人として増えた金額がいくらか、をわかりやすく表示するようにしました

保険の名義変更支払調書

保険の名義変更の回数」という新しい欄が支払調書の中に設けられました。

税務署はここまで体制を整えて、保険の名義変更をした後の個人の利益に対する課税漏れがないように徹底しました

税務署がこのような体制を整えたのに、なぜ今さら「保険の名義変更」の経済行為自体が否認されると考えられるのでしょうか…。

税務署は、納税を正しく行ってもらうための体制整備をしています。税務署が引いたルールに沿って正しく納税すれば、法人の経済行為については何も問題がないのです。

もし、私たちが把握していない「生命保険の名義変更」という法人の経済行為自体が税務署によって否認された事案があるのであれば教えてください。

税理士の思い込みによる機会損失

生命保険の導入については、過去にも、顧問税理士の不安や思い込みで、反対されてやらなかった企業のケースは多くありますが、結果的には、すべてにおいて導入しなかった企業の機会損失になりました

【結果的には機会損失になった事例】

① 過去には逓増定期保険が全額損金で効果が非常に大きかった
② 名義変更で個人が利益が出ても個人の増えた部分は非課税だった(2012年に法人税基本通達34-4条の解釈がしっかり定義される前

このような素晴らしい過去の時代があり、その時代に生命保険に加入した経営者は大きなメリットを享受しました。そして当時、顧問税理士の不安による反対で保険の導入をしなかった経営者は、そのチャンスを逃し、大きな逸失機会となりました。過去の保険税制やルールにおいては、すべてにおいて保険導入した企業が正解となりました

保険の名義変更についてのまとめ

結論として、一般的な「生命保険の名義変更」の経済行為については、全税務署に国から明確な方針が出されてたため、もはや「同族会社の行為否認」が適用されることは考えられません

法人の自動車を個人に売る行為、法人の不動産の個人に売る行為、法人のゴルフ会員権を個人に売る行為、これらとまったく同じである「生命保険を名義変更して個人に売る行為」は、一般的な法人の経済行為なのです。何も特別な経済行為ではないのです。

もちろん、私たちが、今後の将来に国の税制変更が絶対に無いという約束はできません。

しかしそうは言えど、逓増定期保険の中には、保険を5年続ければ、現金での解約返戻率がほぼ100%近くになり、かつその保険期間は大きな死亡保障がカバーされているような保険があるので、税制が今後どうなったとしても保険の導入リスクは、ほとんど無いような保険商品があります。法人はこのような生命保険を加入検討するのが良いと思います。

※1 法人税法132条1項

税務署長は、次に掲げる法人〔筆者注:内国法人である同族会社など〕に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。

※2 所得税基本通達 36-37

保険契約等に関する権利の評価
使用者が役員又は使用人に対して支給する生命保険契約若しくは損害保険契約又はこれらに類する共済契約に関する権利については、その支給時において当該契約を解除したとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額(解約返戻金のほかに支払われることとなる前納保険料の金額、剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額との合計額)により評価する。

会社経営における生命保険の活用

顧問の税理士や金融機関というのは法人向けの生命保険活用のプロではないので知らないのですが、オーナー企業の経営に有利となる「生命保険の活用方法」があります。

創業から20年で、当社からの保険活用提案を導入いただいた企業数は3000社を超えました。

私たちは生命保険の提案だけではなく、オーナー社長にとって有利な会社運営ができるように、経営全般に対しても幅広くアドバイスをさせていただいております。

生命保険を中心とした、オーナー社長にとって有利な会社経営を実践するために、ぜひ当社の力をご活用ください。

また、実際の保険導入で現在の顧問税理士先生に保険活用方法をご納得いただけないような場合には、私たちの保険提案手法を正しく理解し、実際の導入まで支援できる全国展開をしている会計事務所を無料でご紹介できますので、必要な場合にはこちらも併せてお任せください。



 

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