オーナー社長は社宅制度を上手に使って節税できる
社宅を上手に活用した節税方法
社宅制度を上手に使って節税ができそうだ、ということを聞いたことがあるかもしれません。
社宅制度を上手に導入して、今まで社長が住んでいる自宅を社宅に変えるだけで、社長の可処分所得と法人税の両方が節税できます。
社宅による節税事例
年間1200万円の役員報酬を取っているA社長は、東京都江東区の閑静な住宅街の3LDK 家賃30万円(月額)の賃貸マンションに住んでいたとしましょう。
社宅制度が無かった場合、個人の税金が引かれた後の社長の手取りから毎月30万円の家賃を大家さんに支払います。一方、社宅制度を導入した後では、社長個人ではなく会社が大家さんに家賃を支払うようになります。
社宅制度の導入前
1200万円の役員報酬には所得税・住民税が約220万円と社会保険料約130万円がかかりますので、手取りは850万円ほどになります。
社宅制度の導入前は、この税引き後の手取り(可処分所得)から年間360万円の家賃(月額30万円✕12ヶ月)を支払います。つまり、家賃を支払った後は手元に490万円しか残らないのです。
社宅制度の導入後
社宅を導入すると、部屋の借主は会社になります。これにより社長の家賃負担(360万円)がなくなり、会社が大家に家賃を支払うことになります。
これで終わりであれば、とてもおいしい話なのですが、個人負担部分が発生します。
A社長は、大家さんに家賃を支払わなくなった代わりに、自分の会社に「社宅負担金」を支払います。(給与から天引き)
社宅負担金の算出式は税法で定められていますので、それに則って算出しますが、その負担額が今まで支払ってきた賃料の3割程度に低くなったケースもあるようです。
上記の例でいうと、A社長は年間108万円(90,000円✕12ヶ月)だけの負担で、自分で借りたら年間家賃360万円の物件に住むことができるようになるのです。
また、社長の手取りは、税引後850万円から社宅負担金108万円だけを差し引いた742万円となり、社宅導入前と比較して可処分所得を252万円も増やすことができたのです。
社宅制度の導入による法人税の節税効果
社宅導入による恩恵を受けるのは個人だけではありません。実は、会社側では法人税の節税にもなります。
その理由は、社宅導入前は家賃の負担が0円だったものが、社宅制度の導入後には社長に代わって会社に年間360万円の家賃負担が発生して、その結果として、家賃負担という損金が増えることになり法人税の節税につながるのです。
社宅導入後の税務調査で問題にならないようにする
会社に税務調査が入った時に、「社長の社宅負担額が低すぎる」といった指摘をされないようにするために、国税庁の指針に従って社宅家賃の金額を決めておく必要があります。
社長のご自宅を社宅にすることで簡単に法人税の節税や個人の可処分所得を増やすことができます。これまで住んでいた自宅が社宅に変わっただけで、何も変化がないにもかかわらず、節税メリットを享受できるのです。
[令和2年4月1日現在法令等]
役員に対して社宅を貸与する場合は、役員から1か月当たり一定額の家賃(以下「賃貸料相当額」といいます。)を受け取っていれば、給与として課税されません。
賃貸料相当額は、貸与する社宅の床面積により小規模な住宅とそれ以外の住宅とに分け、次のように計算します。ただし、この社宅が、社会通念上一般に貸与されている社宅と認められないいわゆる豪華社宅である場合は、次の算式の適用はなく、通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額になります。
(注1) 小規模な住宅とは、法定耐用年数が30年以下の建物の場合には床面積が132平方メートル以下である住宅、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には床面積が99平方メートル以下(区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定します。)である住宅をいいます。
(注2) いわゆる豪華社宅であるかどうかは、床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。なお、床面積が240平方メートル以下のものであっても、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するものについては、いわゆる豪華社宅に該当することとなります。
■ 役員に貸与する社宅が小規模な住宅である場合
次の(1)から(3)までの合計額が賃貸料相当額になります。
(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%