出国税とは?(日本から国外に転出して非居住者になる時の注意点)
ここでは、日本から海外に移住する際にかかる出国税について案内します。
目次
出国税とは?
「出国税」という言葉を聞いたことはあるけど、実際はどんなものなのかご存じですか?
まず、ここで説明する出国税は、正式には「国外転出時課税制度」と呼ばれているものです。これは、2015年の税制改正で創設された制度で、日本人が海外に移住する際に課される税金のことです。
簡単に言えば、日本から海外に移住する際に、1億円以上の有価証券を持っている人が対象となる税金です。対象者が海外に転出する場合に、その有価証券の含み益に対して所得税を課税する制度です。
なぜ導入されたの?
「なぜこんな税金を作ったの?」って思いますよね。それは国際的な税制の違いを利用した節税を防ぐのが主な目的だったのです。
例えば、日本では株式の売却益に20%の税金がかかります。でも、海外には株式の売却益に税金がかからない国があります。そこで富裕層が税金の安い国に移住してから株を売却してその国で利益をあげることで、日本の税金を逃れるということが起きていました。
この「税金逃れ」を防ぐために出国税が導入されたのです。日本政府としては、「日本で価値が上がった資産の利益は、日本に利益還元してほしい」という考えです。
誰が出国税を払うの?
出国税の対象となるのは、主に以下の条件を満たす人です。
■ 1億円以上の対象資産(主に有価証券)を保有している
■ 出国前10年以内に、日本に5年を超えて住所や居所があった
一般的な海外旅行や短期の海外赴任では対象になりません。長期的に日本を離れる人で、かつ大きな資産を持っている人が対象です。
どうやって払うの?
出国税は、出国時に実際に株式などを売却していなくても売却したとみなして課税されます。これを「みなし譲渡課税」と呼びます。
具体的な手続きは以下のようになります
② その評価額と取得価額の差額(含み益)に対して課税
③ 出国日の前日から4か月以内に確定申告を行って納付する
ただし、すぐに税金の全額を支払うのは大変です。そこで「納税猶予制度」も用意されています。これを利用すると最長5年間、納税を先送りにできます。
出国税の税率は、通常の株式譲渡益と同じ20.315%(所得税15.315%、住民税5%)です。例えば1億円の含み益がある場合、約2,031万円の税金が課されることになります。かなりの金額になります。
出国税の影響は?
出国税の導入によってプラスとマイナスの影響が出ています。
プラスの影響
1. 税収の確保
日本国は富裕層の海外移住による税収の流出を防ぐことができました。
2. 公平性の向上
国内に残る人と海外に移住する人の間の税負担の公平性が保たれるようになりました。
マイナスの影響
1. 海外移住のハードルが上がった
大きな資産を持つ人にとっては、海外移住の際の経済的負担が増えました。
2. 国際競争力への影響
富裕層に大きな負担を乗せることで、富裕層や優秀層たちが資産がますます大きくなる前に、早い段階から海外移住を考えるようになりました。こうして高度な人材の海外流出を促進することにつながっています。
実は、「出国税」のような制度は日本だけにしかないわけではありません。アメリカ、フランス、カナダなど、多くの先進国で同様の制度が導入されています。
例えば:
アメリカ:1996年から導入。純資産が200万ドル以上の人が対象。
フランス:2011年から導入。150万ユーロ以上の株式等を保有する人が対象。
カナダ:1972年から導入。居住者が非居住者になる際に、みなし譲渡課税を行う。
日本の制度は、これらの国々の制度を参考にしながら作られました。先進国から富裕層がほしい低税率国への富裕層の移動は、先進国にとって頭の痛い問題になっています。
出国税の今後は?
出国税は比較的新しい制度なので、その効果や影響については引き続き内容を検討していくことが必要だと思います。将来的には対象資産の範囲拡大や税率の見直しなども検討される可能性があります。例えば、不動産や暗号資産(仮想通貨)なども対象に含むようになる可能性もあります。逆に、暗号資産に関しては現状では出国税の対象にはなっていないので、暗号資産長者はドバイなどに移住して利確してから日本に戻ってくる…みたいなことがまだ可能になっています。
出国税との上手な付き合い方
出国税は、海外移住を考えるような大きな資産を持つ人にとっては避けて通れない問題です。ではどのように準備をしていけばよいでしょうか?
1. 早めの計画を立てる
海外移住を考えている場合は、出国税のことも考慮に入れて早めに計画を立てるべきです
2. 専門家に相談する
税金の問題はセンシティブです。税理士や弁護士など、専門家のアドバイスを受けましょう
3. 納税猶予制度を活用する
一度に大きな金額を支払うのが難しい場合は、納税猶予制度を活用しましょう
4. 資産の配分を考える
出国税の対象となる資産と対象外の資産とのリバランスを検討しましょう
出国税のまとめ
出国税については賛否両論があります。移住が自由になっているグローバル化の中で、国際的な税制の調和は避けられない課題ではあります。その中で出国税というのは、一部の富裕層にとっては大きな負担になりますが、税の公平性を保つ観点からすると重要な役割を果たしています。
しかし、出国税があることで、富裕層や優秀層は逆に日本から出ていってしまいます。重税は長期的には国力を弱めてしまう可能性があることを日本国はもっと深く考える必要があるような気がします。私たちは富裕層や優秀層のサポートをしています。それが日本国の長期的な発展につながっていくと考えているからです。
日本から離れて海外に出る富裕層や優秀層は、海外に出たとしても、様々な形で日本国の発展に寄与しているケースが多くあります。なので私たちは、富裕層や優秀層の海外移住についても積極的にサポートしています。
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